この計画の中止、撤回の声を奈良県に電話、メール、ファックスで集中してください。
奈良県庁 県土マネジメント部 電話 0742−27−8677
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公報課 koho-hp@office.pref.nara.lg.jp
若草山へのモノレール設置計画の中止を
奈良と奈良公園を愛する全国のみなさんへのアピール
二〇一三年十月 日本共産党奈良県委員会
奈良県は国の名勝に指定されている奈良公園の若草山にモノレールを設置する計画を進めています。昨年2月に県が策定した「奈良公園基本戦略」において、高齢者などへのバリアフリー対策の一環として「若草山からの眺望を楽しんでもらうための移動支援施設」として打ち出されたものです。
モノレールの設置が検討されているコースは、若草山の麓から世界遺産にも登録されている春日山原始林(特別天然記念物)の境界部を通過し、芝生の山腹を横断して一重目頂上までを結ぶものです。
計画区域は東大寺や春日大社など世界遺産「古都奈良の文化財」の緩衝地帯(バッファゾーン)にあたり、古都保存法による歴史的風土特別保存地区に指定されています。
「古都奈良の文化財」の世界遺産への推薦書(文化庁)では、春日山原始林について「(春日大社の)社殿と一体となって形成されてきた大社の文化的景観を構成する資産」と定義し、社殿周辺から御蓋山・春日山にかけての景観は「自然に対する原始的な信仰が発生して以来の日本人の伝統的な自然観と深く結びついて、今日まで伝えられてきたものである」としています。
「自然と社殿」以外に不要な人工物を入り込ませない規制とルールを確立し、保護されてきた類まれな文化的景観として、その普遍的な価値が世界遺産として認められたのです。
奈良県は、モノレールは景観に配慮し、極力見えないものにすると検討を進めていますが、これは机上の空論にならざるをえません。検討されている幅5メートル、全長550メートルに及ぶ鉄軌道を若草山の自然の中に敷設すること自体、歴史的に形成された景観と風情を一変させます。
たとえ遠くから見えにくいものであっても、徒歩で登る場合には、ルート案と現在の登山道はほぼ平行しており、登山者はこれまでの若草山とは異質の鉄軌道や乗り物を見続けながら一重目を登ることになります。
さらに、バッファゾーンにおける歴史的風土や景観は、世界遺産の登録資産の価値を保証するものです。山腹を縫う無機質なレールと車両の出現は「古都奈良の文化財」の価値の保証と相容れないものであると考えます。厳正な保全に責任をもってあたるべき県当局が目立たなければよいという発想で、重大な現状変更に手をつけることは許されるものではありません。
こうした立場から日本共産党県議団は、県議会でもモノレール設置計画を厳しく批判してきたところです。
モノレールの検討状況や奈良公園整備に係わる審議・調査内容、資料をあまさず公開するよう県など関係機関に求めます。
モノレールを設置する若草山の現状変更は、計画段階で世界遺産委員会へ通知することが条約上のルールからも必要です。県当局は、国内法をクリアしていれば、報告する必要はないと表明していますが、これは手前勝手な解釈です。
日本国内で文化財保護法などの手続きを経て許可されていても、世界遺産の「真正性」と「完全性」を損なう行為であれば是正が求められることは、遷都祭で設置された平城宮跡の仮設駐車場や第一次大極殿院の修景柵などについて第三十五回世界遺産委員会決議(二〇一一年)が早急な撤去を求めていることからも分かることです。
政府・文化庁は貴重な歴史文化遺産を保護する監督官庁として責務を果たすべきです。
本来、史跡・名勝、世界遺産の価値を損なう整備や活用はあってはなりません。県政には何より、長年大切に守られてきた文化的景観や自然環境の保全を確実なものにする施策の実施が求められます。
同時に、整備・活用にあたっては地元住民・業者や県民、奈良市など関係機関の意見を広く汲み取り、共同して進めることが大切です。そうしてこそ、奈良公園の魅力を生かした観光の振興をはかることができます。
今回の計画について、県が設置した奈良公園地区整備検討委員会で、若草山への移動支援施設の設置自体に疑問を呈する意見が出されていることが伝えられています。地元紙のコラムでも「千古の神域に隣接する場所で遊園地まがいの乗り物は不要」(「奈良」)と厳しい批判が上がっていることは当然です。ところが県は、モノレール設置を強行する構えです。ことは急を要します。
奈良と奈良公園を愛する全国のみなさん。若草山へのモノレール設置計画を中止せよとの声を奈良県当局に集中するなど、たたかいを広げていただくことを心から呼びかけます。
日本共産党は、かけがえのない若草山と古都奈良の景観、自然環境を守る思想・信条の違いを超えた共同を広げるために力を尽くすものです。